精神分析的精神療法家センターJPS Allied Centre for Psychotherapists

センター長ご挨拶

2025年9月 池田 政俊

このたび、2025年度から3年間、日本精神分析協会(JPS)精神分析的精神療法家センター長を引き受けることとなりました。高野晶前センター長の珠玉の「センター長挨拶」はそのまま残したいと思います。

その上で、私のご挨拶を追加させていただきます。
JPS精神分析的精神療法家センター(以下センター)は、JPS精神分析的精神療法家(以下精神療法家)、その研修生、IPA(国際精神分析学会)精神分析家の有志から成り立っております。(JPSがIPA精神分析家だけから成り立っているのとは異なります。(精神分析家候補生はJPSやIPAのメンバーではありません。))つまり、センターは、まさに多様性を尊重している組織・集団です。
私はセンター会員ですが、精神療法家ではなく、IPA精神分析家です。週4回の精神分析は8年間ほど(うち7年間が訓練分析として認められた)受けましたが、週1-3回の訓練セラピーは、10ヶ月ほどしか受けたことがありません。その私が3代目のセンター長を引き受けて良いのかどうか、かなり悩みましたが、まだ認定された「精神分析的精神療法家」が少ない中で、JPSとの橋渡しを試みる役割であろう(それが果たして可能かどうかはわかりませんが、)と考えて引き受けることといたしました。
IPAの正式な下部組織であるJPSが、IPAとは異なる「精神療法家」を独自に組織し、養成して良いのかどうかは議論があるところです。現在、米国や英国で、IPAの組織でありながら、週1-3回の精神療法を行う組織をも併存しているinstituteに関する情報を集めているところです。
個人的には、週4-6回の「精神分析」と、似ていて非なる週1-3回の「精神分析的精神療法」は、とても素晴らしいユニークな営みだと思っています。でも重なる部分がある一方で全く異なる営みでもあるのです。この類似性と違いをどのように考えるか、追求していきたいと考えています。
個人的には、週1-3回の精神分析的精神療法を行う精神療法家であっても、可能であれば、週4-6回の精神分析を受けたり、行ったりする経験を持つべきなのではないか、と考えております。その上で、週1−3回の営みの価値を認め、実践して行けば良いのです。
週1-3回と週4-6回との違いは、効率的・合理的ではない、一見「無駄」な体験(人生はまさにそのようなものではないでしょうか)に、意味や豊かさを感じる体験だと思っています。これを週1-3回の訓練セラピーで感じ取ることができる方もおられますが、あまり多くはない印象です。週4-6回は「精神分析を受けるということは、精神分析が全く役に立たないことを実感する体験である」「精神分析を受けると、自分が自分が思っていたよりもはるかに病的であったことを実感できる。それはとても豊かな経験である」といった先人の言葉に表現されているような、独自の体験なのです。
ただ、訓練分析家が極めて少ない我が国において、そのような体験をすることは極めて難しいことなのだろうとも思います。こうしたことについても探究し、具体的な方策を探っていきたいと考えております。
3年間、よろしくお願いいたします。


2022年8月 髙野 晶(2022~2025)

JPS精神分析的精神療法家センター長の任を初代北山修先生から引き継ぎました。本センターの設立の経緯や位置付けは、初代センター長が「センター設立の趣旨」で述べる通りです。
最初の3年間は、従来のJPSの精神分析的精神療法家のトレーニングシステムを維持しながら新しい組織の活動のあり方を探る期間でした。その結果、新たな研修生を次々と迎えています。
COVID-19感染拡大が続く中、センターとしてはオンラインを活用しながら学術集会を続けることができました。その概要は以下のようなものです。

2019.9 JPS精神療法家センター設立記念シンポジウム「精神分析的精神療法を学ぶ」
#講演「日本の精神分析的精神療法:歴史と文化から学ぶ」
#シンポジウム「精神分析的精神療法を学ぶことについて」
2020.6 学術集会
#発表と討論「精神分析的精神療法:精神療法家と精神分析家のプロセス」
2021.6 学術集会
#講演と討論「精神分析的精神療法の独自性について」
2021.12 学術集会
#講演と討論「日本の健康保険制度と精神分析的精神療法」
#事例検討会
2022.6 学術集会
#発表と討論「それぞれの場での精神分析的精神療法」

精神分析的精神療法についての検討を多角的に精緻化していくことが今の私たちの取り組んでいることだと言えます。学術集会は、精神療法家、研修生そして分析家から構成されるセンター会員によって行われていますが、センター会員ではない分析家や候補生も参加可能となっています。参加者それぞれが立場を超えて闊達に意見交換をする場が育ってきています。
また、本年度より、センターの症例検討会を定期的に始めます。
こうして私たちのセンターは、JPSに併設という他に例を見ない形で芽を吹き伸ばしつつあります。試行錯誤は続きますが、JPSとの相互理解を保ちつつ、関心を共にする方々との琢磨の道のりの次の3年間を歩み始めます。

精神分析的精神療法家センター